「家が好きなひと」の気持ちがちょっとわかるようになってきた
ある日のこども。
「いえって、すごくだいじなんだよ。だって、いえはあんぜんで、かいてきで、こわいことがなにもないでしょ」
へぇ、と思った。
「そとにいくから、いやなことがあるんだよ」
うん、まあそれも一理あるね。
私は子供のころから家にいるのが嫌いだった。実家の家業があって出かけるのが少なかったせいもあるし、田舎で刺激が少なく、歩いてどこにも行けないのが嫌だった。しょっちゅう人の出入りがあって、落ち着かないし、安全でも快適でもないし、家族の対応に神経を使って疲れていた。
私のこどもは家にいるのが好きで、外出はだいたい渋る。張り切っていったディズニーランドも水族館も子どもはあまり喜ばなかった。もともと刺激に弱い性質もあると思う。大きい音や、たくさんの人が怖いのだという。
こどもが喜ばないと、がっかりしてしまう。だから近年は外出もだいぶ減った。どうしても行きたいところは、私1人で行かせてもらうことにしている。夫もハイキングや登山が趣味なので、1人で行ってもらっている。
家にいる時間が増えるなら、と思って、ちょっとずつ家に手をかけるようになった。カーテンとカーペットを好みのものに買い換え、寝具を一新し、好きな飲物やちょっとしたお菓子を常備しておくようにした。イメージは、ホテルのクラブラウンジである。
気になってはいたけど高価だなぁと思っていたニンテンドースイッチを買ったり、動画配信サービスも契約してみた。
そうしたら、家にいるのがちょっとだけ好きになった。手をかければ応えてくれるのが家というものなんだなと今さらながら思った。今までの自分は、家をないがしろにしすぎていたかもしれない。なにしろ、寝られて、物がおければじゅうぶん、と思っていたので。
でも、家にいるのは安心だけど、新しい発見や、新鮮な驚きって少ないと思う。いやなこともないけど、すっごくいいこともないっていうのが正直なきもち。外にいったら、嫌なこともあるけど、すばらしいな!って思うこともある。やっぱり、バランスかな。家にだけいるのも、外出ばっかりするのもなんだか偏ってる。
私は家にいる時間をもっと好きになって、こどもはちょっとずつ「外にいるのもおもしろいな」って思ってくれたらいいんだけど。こどもと夫とわたし、3人が心地よいバランスを探していきたいな。